準備していますか?働き方改革法案成立
2018年6月、国会で審議されていた「働き方改革関連法案(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案)」が可決・成立しました。
この法律の成立をうけ、企業は2019年4月1日に施行される各法案に向けて対応が必要となります。
どのような対応が必要となってくるのか、ここでは主なポイントを解説していきます。
働き方改革法案の概要
働き方改革法律は、新たにひとつの法律ができたように勘違いされていることがあるが、実際は雇用対策法、労働基準法、労働時間等設定改善法、労働安全衛生法、じん肺法、パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法の改正を行うための法律として成立しました。
法案の要旨は、「働き方改革の総合的かつ継続的な推進(雇用対策法の改正)」「長時間労働の是正と多様で柔軟な働き方の実現等(労働基準法等の改正)」「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保(労働契約法・労働者派遣法等の改正)」の3つが柱となっています。
ではその中身を簡単に解説していきたいと思います。
働き方改革の総合的かつ継続的な推進
法律名が「雇用対策法」から「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(長い…)に改正されました。
目的条文を改正し、国の労働政策の基本的方針を、働き方改革に即したより総合的な内容とするとともに、国や事業主の責務や基本方針の策定など、働き方改革に関する規定の整備がされました。
長時間労働の是正と多様で柔軟な働き方の実現等
働き方改革法案の核となるともいえる部分で、主に以下の内容が盛り込まれています。
• 時間外労働の上限規制の導入
• 年次有給休暇取得の一部義務化
• フレックスタイム制の見直し
• 高度プロフェッショナル制度の創設
• 勤務間インターバル制度の普及促進
• 産業医・産業保健機能の強化
企画型裁量労働制の対象業務の追加については、厚生労働省のデータ不正問題で削除されました。
雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保
派遣や正社員/契約社員などの雇用形態にかかわらない、公正な待遇の確保を目的とし、主に労働契約法や労働者派遣法などが改正されました。
• 不合理な待遇差を解消するための規定
• 派遣先との均等・均衡待遇方式か労使協定方式かを選択
• 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
• 行政による履行確保措置と裁判外紛争解決手続(いわゆる行政ADR)の整備
企業の対応が必要となる事項とは?
諸々改正されたなかで、特に対策上重要になってくるのが、「労働時間法制の見直し」と「公正な処遇の確保」です。
労働時間法制の見直し
大きなトピックとしては、時間外の上限規制の導入と年次有給休暇取得義務化の2つだと思います。
時間外上限規制の導入
現在も、時間外・休日労働を行なう場合、三六協定を締結し、それに定められた時間内でしか時間外労働をすることができません。(労働基準法第36条)
これは法改正前も後も変わりませんが、法改正後は、違反した場合に罰則が適用されることとなりました。
その上限は。原則月45時間・年360時間、臨時特別な場合でも年720時間・単月100時間(休日労働含む)・複数月平均80時間(休日労働含む)とされています。
ここで解り難いのが「複数月平均80時間」ですが、これは2ヶ月・3ヶ月・4ヶ月・5ヶ月・6ヶ月のどこの平均をとっても80時間を超えないことをいいます。
大企業は2019年4月1日、中小企業は2020年4月1日施行のため、それに向けた準備が必要となってきます。
尚、この上限規制には、以下の5つの適用除外事業・業種が設定されています。
・自動車運転
・建設
・医師
・鹿児島/沖縄の砂糖製造
・新技術・新商品等の研究開発
人手不足を反映していますね、、、
ただ、研究開発以外は5年後を目処に上限適用が予定されていますので、何れにしても対策は必要となってきます。
年次有給休暇の取得義務化
現在は、労使協定による計画的付与を行っている会社以外は、基本労働者が会社に対し年次有給休暇の取得を(建前上)好きなときに申請・取得する形になっているかと思います。
今回の法改正により、年10日以上年次有給休暇を付与される人について、年5日会社が取得する時季を指定して年次有給休暇取得させる義務を課しました。もちろん、違反した場合は罰則が適用されます。
本人が自ら使用した場合や計画的付与で使用した場合、5日からその日数分マイナス可能ですが、何れにしても、年次有給休暇管理簿等で管理することが求められています。
意外なほどあまり話題になっていませんが、2019年4月1日からの施行で、年次有給休暇を取得し難い会社なんかでは、まさに働き方改革を実感できる制度となると思います。一方、企業側のインパクトも大きいので、しっかりした準備をしていく必要があります。
公正な処遇の確保
いわゆる「同一賃金同一労働」です。
今回の改正で「パートタイム労働法」「労働契約法」「労働者派遣法」が改正され、「パートタイム労働法」は法律名も「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」
(いわゆる「パートタイム・有期雇用労働法」)となりました。
今まで網羅的に整備されていなかった、正社員と非正規社員(派遣社員)の不合理な待遇差を禁止する規定を整備すると同時に、待遇に関する説明義務を強化したものです。
内容的には、長澤運輸・ハマキョウレックスの最高裁判示を盛り込んだような内容となっており、①職務内容 ②配置変更の範囲 ③その他の事情 の違いを考慮したうえでの「不合理な待遇差」や、前述①②が同じ場合の「差別的取扱い」を禁止する内容となっています。
施行は、大企業が2020年4月1日、中小企業は2021年4月1日で、まだ時間はあるものの、ヤバそうなものがあれば、規程の整備等勧めていく必要があり、早めの対応が必要となってきます。
まとめ
細かい部分をみていくと、まだまだ色々な改正がされていますが、若年層のワークライフバランスを重視する傾向もありますので、働き方改革の良いキッカケとして捉え、準備を進めていきたいものです。